スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

第三極革新勢力の構想と設計 (1) - 対立軸とBブロックの政治

第三極_2 丸山真男は、『現代政治の思想と行動』の「追記および補注」の中で、「(日本の民主化は)西欧社会と比べて相対的に『左』の集団的推進力を通じて進行する」と言っている(未来社 旧版 P.513)。この言葉は1957年に残したものだが、私はこの言葉にずっと納得と共感を覚え続けてきた。この言葉は、例の「戦後民主主義の虚妄に賭ける」などと並んで、丸山真男の政治学の偉大さを証明し続ける言葉であり、私の中で大切に記憶してきたが、半世紀前の丸山真男の指摘は、今でも啓示として日本の政治の本質を射抜いているのではないか。日本の政治の現実とそれを生成させている社会の構造は、欧米社会とは異質の伝統と基底を持つ。また、東アジアには西欧を凌駕する勢いの資本主義経済の国が3か国あるが、それぞれの近代政治の模索や選択で形態は西欧諸国とは異なって独自のものとなっている。民主主義、すなわち国民の多数が権利と福利を手にする政治のあり方は、各国の置かれた歴史的条件や状況によって異なってよいのではないか。民主主義の挑戦とは、外国のモデルを絶対視して移植することではないはずだ。  

第三極_0制度ではなく運動としての民主主義を見たとき、現在、3国を比較して最もダイナミックなデモクラシー像を提示しているのは韓国の国民で、彼らには街頭で戦う民主主義がある。権利を獲得し権利を守るためには、街頭に出て果敢に戦わなければならないことを知り、現に生身の肉体を激しくぶつけるように団結と闘争を展開して見せている。だからこそ、国民がより主人公の立場でいられる政治があり、例を挙げれば、非正規労働者の待遇の面で日本より先進的な実質を確保できている。日本も、私の記憶にある1970年代は、三角大福の頃の政治では、日本にも自分が権利主体であることを街頭で訴える市民が多くいて、国民は政治の中で、そして労働現場の中で、現在よりはるかに主人公的な存在だった。政治が国民の方を向いていて、政治家は国民に丁寧に言葉を発していた。財政再建で歳出削減となったときに、防衛装備費や役所の施設事業費の前に、真っ先に高齢者医療が削られ、障害者福祉が削られ、生活保護の母子加算が削られる国というのは、あの当時の日本の国の姿からは想像もできない。私は日本の国に生まれてよかったと思っていた。

第三極_3現在より相対的に国民が主人公であった政治社会体制を、国民が無権利状態に放り出され、一票が何の意味も持たない現在の体制に変えたのが、90年代前半の「政治改革」の動きである。自民党を選ぶか民主党を選ぶかの単純選択の選挙。候補者は最初から決まっていて、両方とも保守で大きな違いはなく、どちらかの保守を選ぶしかない投票。一票で政治を動かすことはできず、政治学者たちが「政治改革」で約束した言葉とは裏腹に投票率は下がって行った。国民が政治から疎外されつつ、国民の生活は悪くなって行き、それをどうすることもできなくなった。選挙のたび、民主党はマニフェスト選挙を宣伝し、政権選択選挙を宣伝し、二大政党システムを完全なものにするべく、左翼二党への投票は死票だから放棄するように有権者を説得した。決して野党共闘による自公政権打倒の動きにはならなかった。有権者は納得し、民主党に投票して、左派政党は一桁の端数異端に没落し、二大政党システムは完成に近づいて行く。と同時に、二大政党が掲げた政策である新自由主義は政府の法制度体系となり、国民経済と国民生活を大きく変え、社民主義的な性格の制度は消滅させられて行く。

第三極_4現在の日本の政治における対立軸は、自民・民主ブロックと社民・共産ブロックの間に太い線で引かれている。自民・民主ブロックをAブロックと呼ぼう。社民・共産ブロックをBブロックと呼ぼう。Aブロックの経済社会政策の基本は新自由主義であり、経団連と投資家の利害を守る立場にある。安保防衛政策の基本的立場は改憲であり、米国に追従する外交である。Bブロックの経済社会政策の基本は社会民主主義であり、社会保障を重視し、労働者や中小企業の権利と利害を守る立場にある。安保防衛政策の基本的立場は護憲で、各国と等距離の平和外交をめざす路線を据えている。AブロックとBブロックは基本政策で対立している。両者の対立は原理的で前提的で自明的なものである。われわれは、この二者の対立について目を向けず、日本の政治に何の対立軸もないかの如き言説に納得している。日本の政治に対立軸がないかのように見えるのは、Aブロックの二党の間に対立を見ようとばかりするからであり、自民党と民主党という新自由主義と改憲を掲げる保守政党間の対立軸にばかり注目するからである。無論、AブロックとBブロックの政策理念の対立が注視されないのには理由がある。

第三極_5第一に、Aブロックに対してBブロックの勢力があまりにも小さく、非対称で、小選挙区制の下でBブロックは政治勢力として排除され、大政党である自民党と民主党の対立と競争だけが現実の政治を支配しているからである。本来、対立と角逐はAブロックとBブロックの間で起こらなければいけない。もし選挙制度が比例代表だけであれば、Bブロックの勢力もある程度の議席数を得て、AブロックとBブロックの対立が国会やマスコミ報道に反映するようになるだろうが、現行の選挙制度はBブロックの政党が勢力を持つことを阻むシステムになっていて、Aブロック内部の二党間の対立だけが政治の全てであるかの如き仮象を作り出している。第二に、Bブロックの政党である社民党が、Bブロックでの政党であるにもかかわらず、Aブロックの民主党と連携し、自らをAブロックの最左翼政党であるかの如き錯覚と自己欺瞞を持って行動している点がある。同じBブロックの共産党も仲間のはずの社民党とは手を組まず、独善主義に走り、自分だけが孤高のBブロック政党であると自己規定し、Bブロックの政策に対する支持を一党だけに集中するべく党利党略を敢行している問題がある。Bブロック二党は互いに無視し反目し合っている。

第三極_6社民党の現党首は私の前で、まるで共産党は日本の政治の論外的存在であるように言い捨て、Bブロック範疇を脳裏に描き持つ私を驚かせた。彼女の「全野党共闘」の概念の中に共産党は入っていない。二党は同じBブロック政党なのに党首会談もやらない。政策協議もやらない。それならせめて、Aブロック二党を見習って党首討論でも開催すればいいのに、それすら企画しようとしない。過去を引きずり、互いに憎悪し、相互にサドンデスの消滅を願い合っているように見える。私は、Bブロックの政治を拡大することが、格差と貧困に喘ぐ国民生活を再建し、国民が将来に希望を取り戻する唯一の方法だと考え、その政治を実現するためにはどうすればよいかを構想したい。自民党と民主党の間で基本的な対立があるかの如き認識は幻想である。二つの党は(政策交代のない)政権交代もできるし大連立もできる。政策の基本は変わらない。新自由主義を打倒して基本政策の転換をめざす者は、民主党への投票を呼びかけるのではなく、社民主義の本格的勢力を作ることを試みなければならない。古い社民勢力(互いに仲の悪い伝統的左翼二党)に頼り任せるのではなく、新しい革袋に入った新しい社民勢力を結集し、議席を奪い、国政を左右する勢力となる必要がある。

第三極_7今後の記事で次のことを考えたい。(1)新しい社民勢力のイメージと勢力結集の知恵、(2)どれくらいの国会議席をめざすのか、(3)何から始めてどのように社民政権を展望するのか。新自由主義の克服は、単に非正規労働者の日常の現場から「岩盤」を手掘りするのではなく、また既成政党に政策実現の請願をするだけでもなく、自分たちの手で政治を変えることによって実現しなくてはならないはずだ。それが国民主権の行使というものだ。政治によって新自由主義を追い詰め、政府の政策から、政府の予算と法案から、新自由主義を消さなくてはならない。陣地戦だけではなく機動戦を仕掛けなくてはいけない。乾坤一擲の関ヶ原で勝利しなくてはいけない。政治権力で社会政策を変えないといけない。経団連が牛耳る新自由主義政党の権力ではそれは無理だ。STOP THE KOIZUMIは、そもそも革新新党を作ろうとするアクションだった。新自由主義と改憲を拒否する第三極の構想と設計、このことを誰かがやらないといけない。一つのイマジネーションを提示し、合意と賛同を集める運動を興さないといけない。そうでないと、新自由主義を拒否する世論が、新自由主義の政党である民主党の票に化けてしまう。

第三極_z

PARC.jpg
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

No title

以前一度commentした大学院生です。
HTさんの第三極革新ブロック構想に賛同します。対立軸表も非常にわかりやすいですね。日本にも質の高い左翼政党があってしかるべきです。

残念ながら、今のネット世代(自分含め)に、共産・社民に本気で期待している人間などいません。存在時代がシーラカンスという感じです。それは、おそらくは両党が口先で平和を唱えながら本当は弱者の気持ちをわかっていない(HTさんが先日の集会で体感したように)こと、匿名の掲示板などで党首の出自が明かされていること(福島氏の本名など)を知っていて、自分たちの苦悩をシェアしてくれる人物として不適格の烙印を押しているからだと思います。民主党の分裂に期待するしかないのでしょうか。

No title

現代にとって不可欠のものがあるとすれば、革命なのかもしれません。その意味で、この構想に強く共鳴します。私の中にあるイメージは「ビロード革命」です。無血開城のごとき民主化革命を起こしたのは、市民の力とバツラフ・ハベルのような知識人たちがいたからこそです。バツラフ広場で歓声を上げる市民と力強く演説を行うハベルの姿は感動的でした。

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

No title

>新しい社民勢力のイメージと勢力結集の知恵

人を結集するためには、「なるほどなあ」と思わせるほどの求心力を備えた理念が必要になるかと。

1. アメリカの平均した生活水準の高さ
2. ソ連の徹底した生活保障
3. イギリスの議会制民主主義
4. 日本国憲法の平和主義

ちょっと古いですが、基本はこの江田ビジョンかな、と思います。

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

No title

>既成政党に政策実現の請願をするだけでもなく、自分たちの手で政治を変えることによって実現しなくてはならないはずだ。

以前ブログの記事でもお書きになっていらっしゃったように、わたくしたちの希望の星である派遣村オールスターズの一人である湯浅さんに政治の展望について、質問してみました。その返答は、「既成政党」であっても、労働者派遣法の全面禁止を実現することは可能であるといったものでした。その返答に大きな落胆と憔悴を覚えましたが、それが湯浅さんの政治に対する立場のようです。

No title

貴方のお考えに賛同致します。
すっと以前(1980年代)、私はほとんど常に共産党に投票しておりました。しかし、その後の社会党の崩壊から民主党の結成という流れの中で、いつしか貴方のおっしゃるところの政治改革・政権交代の幻想に踊らされるように、私の投票行動は変わっていきました。その中で、新自由主義的な価値観にも一時期洗脳されていたことも懺悔しなくてはなりません。
こんな私のような似非左翼の多くが、かつての菅直人氏や市民運動などへの期待とともに、民主党へ流れていったはずです。その結果が現在の政治情勢だと考えると、悔やまれます。
最近では、再び共産党に投票することが多くなっています。選挙では必ず投票してきましたし、どの候補者も必ずしも完全に共感できるものではありませんが、どなたかもおっしゃっていたように政治とは「より悪くないものを選択すること」でもありますので、現実的には共産党などを選択するほかないと思います。
ただ、私の中では、新自由主義と社会民主主義といった対立軸の他に、もうひとつの大きな対立軸があることも確かです。この点については、あらためてコメントできたらと思います。

No title

現在の対立軸が、格差と貧困をもたらした新自由主義に対する対応にあることは明らかです。次の総選挙は、新自由主義に鉄槌を下す機会でなければならないのです。

しかし、現実には新自由主義的政策が正面から争点になる雰囲気はなく、とても危惧される状況です。なぜそうなるのかと切歯扼腕の思いでいましたが、その理由の根底に政治改革の名のもとに成立した小選挙区制が構造的な問題として存在することが世に倦む日日さんの解説でよく分かりました。ありがとうございます。

そうすると、小選挙区制のもとでは共産党や社民党に現状をすぐに大きく変えることを期待しても、そもそも無理というものです。彼らの質の問題をことさらに強調すると、この構造的問題の重要性が背景に行ってしまうことを心配します。

一刻も早く新自由主義のダメージから回復する道は、「格差と貧困」「憲法の完全実施」に焦点を絞った国民的運動に基づく第三極革新ブロックの構築なのだと僕は理解しました。これが共産党・社民党を含むあらゆる反新自由主義勢力に門戸を開いた形で展開されることが重要なのですね。
プロフィール

世に倦む日日

Author:世に倦む日日
(世に倦む日日FC2版)

最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
リンク
access countベキコ
since 2004.9.1












RSSリンクの表示
アクセス数とメール
エキサイト版に避難中です。
FC2のふざけた釈明

access countベキコ
since 2004.9.1


  
ご意見・ご感想

Twitter
Google 検索ランキング
下記のキーワード検索で
ブログの記事が上位に 出ます


竜馬がゆく
花神
世に棲む日日
翔ぶが如く
燃えよ剣
王城の護衛者
この国のかたち
源氏物語黄金絵巻
セーフティネット・クライシス
本田由紀
竹中平蔵
皇太子
江川紹子
G20サミット
新ブレトンウッズ
スティグリッツ
田中宇
金子勝
吉川洋
岩井克人
神野直彦
吉川元忠
三部会
テニスコートの誓い
影の銀行システム
マネー敗戦
八重洲書房
湯浅誠
加藤智大
八王子通り魔事件
ワーキングプアⅢ
反貧困フェスタ2008
サーカシビリ
衛藤征士郎
青山繁晴
張景子
朱建栄
田中優子
三田村雅子
小熊英二
小尻記者
本村洋
安田好弘
足立修一
人権派弁護士
道義的責任
古館伊知郎
国谷裕子
田勢康弘
田岡俊次
佐古忠彦
末延吉正
村上世彰
カーボンチャンス
舩渡健
秋山直紀
宮崎元伸
守屋武昌
苅田港毒ガス弾
浜四津代表代行
ガソリン国会
大田弘子
山本有二
永岡洋治
平沢勝栄
偽メール事件
玄葉光一郎
野田佳彦
馬渕澄夫
江田五月
宮内義彦
蓮池薫
横田滋
横田早紀江
関岡英之
山口二郎
村田昭治
梅原猛
秦郁彦
水野祐
渓内譲
ジョン・ダワー
ハーバート・ノーマン
アテネ民主政治
可能性の芸術
理念型
ボナパルティズム
オポチュニズム
エバンジェリズム
鎮護国家
B層
安晋会
護憲派
創共協定
二段階革命論
小泉劇場
政治改革
二大政党制
大連立協議
全野党共闘
民主党の憲法提言
小泉靖国参拝
敵基地攻撃論
六カ国協議
日米構造協議
国際司法裁判所
ユネスコ憲章
平和に対する罪
昭和天皇の戦争責任
広田弘毅
レイテ決戦
日中共同声明
中曽根書簡
小平
国民の歴史
網野史学
女系天皇
呪術の園
執拗低音
政事の構造
悔恨共同体
政治思想史
日本政治思想史研究
民主主義の永久革命
ダニエル・デフォー
ケネー経済表
価値形態
ヴェラ・ザスーリッチ
李朝文化
阿修羅像
松林図屏風
奈良紀行
菜の花忌
アフターダーク
イエリネク
グッバイ、レーニン
ブラザーフッド
岡崎栄
悲しみのアンジー
愛は傷つきやすく
トルシエ
仰木彬
滝鼻卓雄
山口母子殺害事件
ネット市民社会
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。