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津村記久子『ポトスライムの舟』 - 非正規労働とモラルハラスメント

ポストスライムの舟_1_1第140回芥川賞を受賞した津村記久子の『ポトスライムの舟』を読んだ。イントロから入りやすく、最後まで一気に読め、あれ、もう終わりかと思うほど「了」があっと言う間にやって来る。30歳の女性の芥川賞作品という情報に接すると、予断として文章や文体の未熟さやクセの強さを意識し、読む前から何か身構えてしまうが、この作品にはそうした偏見は無用だった。プレーンでオーソドックスな短編小説として抵抗なく読める。むしろ、どちらかと言えば、物語に変化が乏しくて、内面的な深さや作者のメッセージを強く感じさせないところに不満を覚える読者の方が多いかも知れない。事前情報から受ける先入観に較べて毒がない。この意外な毒気のなさが、私には不満よりも好感の方に作用して、作品と作者に対する積極的な評価となった。それは、この作品には続編がありそうだという期待感にも繋がっている。これから波乱のドラマが続きそうな余韻が残り、登場人物たちのその後の運命に想像を掻きたてられる。私は、この小説はテレビドラマの脚本として完成が可能なのではないかという印象を持った。ナガセ、ヨシカ、りつ子、そよ乃、4人の人生はどうなるのだろう。  

続きの内容をレジまぐ版に詳しく公開しました。コメントはこちらの方にお願いします。

話題となった今年の芥川賞受賞作。主人公はもうすぐ30歳になる契約社員の女性。工場でラインの単純作業に就き、月給は手取りで13万8千円です。彼女に3人の大学時代の女友だちがいて、2人は専業主婦ですが、この4人の間で起こる1年間の事件を淡々と追いかけながら物語が静かに進行します。作者の津村記久子は、芥川賞授賞式の会場で、「厳しい労働条件で働いている人に響く小説だと思うが」と記者に聴かれ、「私の小説なんてまだ生ぬるいと思います」と言い、「働くことを奪われることの怖さは、本当に想像しただけで寒気がするようなこと」と語っています。この言葉がよく伝わってくる作品でした。ご一読をおすすめします。

下の写真は、小説の前半で登場するところの、昨年開催された神戸市立博物館でのルーブル美術館展のポスターですね。小説の舞台は奈良。会話は全編、関西弁で軽快に展開されています。

ポストスライムの舟_1_Z2


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社会不安

 久々の文芸評論で、なんだか安心しました。政界の闇を暴く暗く怖いエントリももちろん興味あるのですが、連日だと読むほうも書く方も疲れますよね。このような芸術評論を即す激励の非公開メイルを出そうと思っていた矢先でした。

 この芥川賞受賞作はまだ読んでいないのですが、ひとつの小説から社会不安をあぶり出す「世に倦む日日」さんのいつもの手法に、異国にいても日本の状況が客観的に理解できます。

 アメリカ発の悪しき部分=格差社会、そして「すべり台社会」の恐怖など。世界中どこにいても共通の不安なのでしょうが、僕のアタマのなかでは特別の意味をもっていたその国=日本が特に落ち込んでいる、という不思議感は残像としてこびりついています。

働くことを奪われます

主人公に近い立場でこの作品を読みました。

私は奈良生まれで大卒のロストジェネレーション(年は7つ上の団塊ジュニア)です。月給は東京新宿ながら17万円です。

2006年末から派遣ユニオンの関根秀一郎氏を頼り、KDDIエボルバ支部として格差是正を求め活動しています。そのなかで昨年夏、KDDIは2010年3月末国際オペレータ通話廃止すると発表。子会社の時給制契約社員の国際オペレータ全員が仕事を奪われます。

そんな激しい側面の裏側、私の日常や心情とも言える部分まで丁寧に描かれたこの作品を、私も気に入っています。
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