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法改正慎重論の論理矛盾 ? 内部留保論のスリカエと使い分け

派遣村?1月10日_11/9の衆院予算委の質疑で、今度は与謝野馨経済財政担当相の答弁があり、常用雇用化への努力を企業に求め、製造業派遣法制についても規制強化の検討の必要性を指摘した。舛添厚労相、河村官房長官に続いて3人目の閣僚による製造業派遣規制への前向き発言である。昨夜(1/9)の報道ステーションで少しだけ与謝野担当相の答弁が紹介されていたが、企業は従業員のものであり、顧客のものであり、単に株主や経営者のものではないという見解が示され、「何兆円にも及ぶ内部留保を持つ企業が、時給千円足らずの方の職を簡単に奪うことが本当に正しいのか」と述べて、企業に内部留保を使った雇用維持を求めていた。この発言は、1/5と1/7の河村官房長官の発言と符牒が合っている。無能で役立たずの麻生首相に代わって、政権内での与謝野担当相の存在感が大きくなっていて、12月の予算編成も与謝野担当相が仕切って取り纏めている。政府(官僚)を代表する政策指針は与謝野担当相の口から出るようになり、マスコミの注目度も高くなっている状況がある。  

派遣村?1月10日_2しかしながら、その答弁の中で、「直ちにこの話に手をつけることで、46万人(の製造業の派遣労働者雇用)が危なくなるのは断固避けねばならない」とも言い、製造業派遣禁止の法改正に対して慎重論を示している。この慎重姿勢が現在の政府の統一見解であり、朝日新聞も同じ態度であり、これは経団連の方針であり、つまるところ法改正先送りの結論である。要するに、政府も経団連も朝日新聞も同じことを言っていて、法改正して製造業派遣を禁止すれば、非正規雇用を正規雇用に変えざるを得ず、そうなれば企業の人件費コストが高くなり、利益が減って経営を圧迫するから受け入れられないという論理である。世界同時不況に直面し、極端な販売不振で売上が落ちている企業にとって、人件費をこれ以上増やすわけにはいかず、派遣が正規になって人件費が増えるようであれば、派遣労働者の人数そのものを一気に削減せざるを得ないという主張である。朝日新聞も納得して、読者に合理的な一般論として説明しているこの議論は、しかしよく考えれば、明らかに矛盾した点があり、単に経営側の言い分でしかないことが分かる。

派遣村?1月10日_3どこが論理矛盾しているか。与謝野担当相の発言が典型的だが、最初に企業は内部留保を使って雇用を維持せよと言いながら、最後に製造業派遣禁止は人件費増で赤字経営になるから容認できないと言っている点だ。そして製造業派遣規制見送りを、恰も派遣労働者の利害に沿った政策であるかのようにスリカエている点である。内部留保を雇用維持に回せと言うのであれば、非正規労働を正規労働に切り替えた分の人件費増も内部留保でカバーさせればよいではないか。現実に膨大な内部留保があるのである。昨日の枝野幸男議員の予算委質問では、02年に56兆円だった内部留保が20兆円増え、07年には76兆円になっていると指摘があった。共産党の赤旗新聞の記事では、財務省の「法人企業統計」が根拠として出典されているが、資本金10億円以上の大企業の07年の内部留保は総額で240兆円に上り、02年から66兆円も増えている。240兆円と言えば、国の予算(一般会計)の3年分の規模になる。半期や1年の短期の決算では赤字経営になっても、これだけ膨大な内部留保(キャノン3兆円、トヨタ13兆円)を溜め込んでいれば、企業の経営にインパクトが出るわけではない。

派遣村?1月10日_4与謝野担当相と日本政府が、企業は従業員のものでもあると言うのなら、労働者の雇用を維持するために法改正に踏み切り、製造業から派遣労働者をなくし、その分の人件費を内部留保の取り崩しで企業に充当させればよいのである。製造業の派遣を禁止すれば人件費が増えて経営に打撃を与えるというのは、資本の側の論理であり、株主の一方的主張であり、それを中立の立場である政府や、まして朝日新聞が天下の正論のように言うのは明らかにおかしい。間違っている。無論、中には内部留保の余裕を持たず、財務的に苦しい中小企業もあるだろう。そういう企業は、派遣社員だろうが正社員だろうが、人件費削減をしなければならないときは、倒産する前に人員整理に手を着けざるを得ない。だが、全体として、240兆円の膨大な内部留保があれば、それを使えば、たかだか46万人の派遣労働者を正規従業員に切り替える程度の人件費増分をどうして吸収できない理由があるのだろうか。思い出して欲しいが、わずか4年前は製造業の派遣は禁止されていたのである。4年前に帰るだけではないか。4年前も日本企業は強い国際競争力を持っていたし、国際市場で十分な価格競争力を持っていた。

派遣村?1月10日_5単純化した数式だが、「製品単価=部材費+労賃+販間費+利益」となる。労賃が増えても利益を減らせば製品単価は上がらない。河村官房長官や与謝野担当相が言っている「内部留保を活用せよ」の意味は、この数式で労賃を増やして利益を減らせという意味に他ならない。「企業は従業員のものでもある」というのは、まさにそういう意味である。企業が株主だけのものであるならば、内部留保を取り崩す必要はなく、利益を減らして労賃を上げる必要はないだろう。日本政府は、企業は株主だけでなく従業員のものでもあると言い、派遣切りを回避するために内部留保を使えと企業に言うのだから、もう一歩進んで、その内部留保を派遣労働者を正規労働者にするために使えと言えばよいのである。派遣法の法改正がされない限り、派遣切りをしないかどうかは経営者の努力目標の問題になり、法的な制限や責任の問題は発生しない。法改正がされれば、製造業から派遣がなくなり、労働者が解雇(契約解除)の瞬間に路上生活者になるという事態は避けられる。4年前に戻るだけだ。経営にとっては、短期決算で黒字幅が減り、内部留保の増殖の速度が鈍るだけである。単に株主への配当を減らして、経営者の報酬を減らせばよいだけではないか。

派遣村?1月10日_6人件費負担増で赤字経営になるからとか、急に規制強化をすればかえって雇用機会を減らすとか、そういう理由づけで製造業派遣禁止に反対する主張は、内部留保の問題を全く視野に入れてないか、あるいは意図的に遮蔽した議論であると言えるだろう。ゴマカシでありスリカエである。内部留保を取り崩せばよい。そもそも単年度の資本剰余金の累積である内部留保は、それを創出したのは、現場で働いて製品を生産した労働者であり、配当を貰って家で遊び暮らしている株主ではない。新自由主義の原理で持続可能な社会を運営することが無理だと分かった現在、われわれがなすべきは、資本主義を公共的な性格に変えて行くことであり、生産して得た利益を社会的に公正に再配分するよう仕組みを変えることである。76兆円とか240兆円という膨大な内部留保を、製造業派遣禁止の法改正を担保する原資にすればよいのだ。政府は1円の費用も税金から拠出する必要はない。責任は企業経営者にある。短期会計決算に対する物神崇拝をやめ、新自由主義と決別し、「企業は従業員のものでもある」という理念を法的に実質化する労働法制と資本法制に切り替えることだ。それは決して大袈裟なことではない。4年前の企業社会に戻るだけだ。4年前の日本の製造業の経営と労働に戻るだけだ。

派遣村?1月10日_7今、新聞と経営は、製造業派遣を禁止する法改正の代わりに、派遣切りをしても路上生活者が出ないセーフティネットの充実をというような議論に世論を巧妙に誘導している。責任を政府の方に持って行き、オランダ型モデルを実現せよというようなことを尤もらしく主張している。時間をかけて議論せよなどと言っている。これは新自由主義による悪質な世論操作である。こういう形で委員会や懇談会ができても、制度設計に時間がかかって1年や2年では絶対に結論は出ないし、出そうとしない。きっとウヤムヤになって、いい加減な座長がいい加減な中間答申を出して終わりになる。そうでなくても、年金や医療の社会保障費で支出が膨らんでいる政府(厚労省)が、新しい政府負担のシステムを制度化することに前向きになるはずがない。これは企業の新自由主義経営の尻拭いを政府がするということだ。日本の労働者にとって、最大のセーフティネットは正社員の法的地位と待遇であり、小沢一郎ではないが、嘗てのような終身雇用制の下での労働環境である。新自由主義のイデオロギーによって日本的経営や終身雇用制は邪悪化され否定された。だが、本当に邪悪なのはどちらだったのか。社会に富と幸福を齎すのは、逆に社会に貧困と不幸を齎すのは、果たしてどちらの経営思想と世界観だったのか。その問いに決着をつけなくてはいけない。

製造業派遣禁止の法改正合意は無理だとか、時間がかかるとか、民主党や労組の中にも慎重論が根強いとか、経団連のイヌになった朝日新聞は、必死で「棚上げ」の方向を記事で既成事実化して、正体も分からぬ欧州型セーフティネット論の幻想ばかり囃し立てているが、法改正が最短の問題解決なのであり、最も現実的な解なのである。騙されてはいけない。

派遣村?1月10日_Z1派遣村?1月10日_Z2
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