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AIGの事実上の破綻と整理 - 水野和夫が解説するCDSの市場崩壊

AIG破綻_1NYSEが7000ドルを割って6763ドルまで大幅に下落した。直接の原因は、AIGが発表した巨額の損失計上と米政府による追加支援の報道で金融不安が再燃しため。今日の日経と朝日はこの問題を大きく扱っている。AIGが発表した10-12月期の最終赤字は617億ドルで米企業史上最高。2008年通期の最終損益は992億ドルの赤字となった。昨年の金融危機発生以降、米政府はAIGに2度にわたり1200億ドルを超える公的資金を注入してきたが、今回も3度目となる300億ドルを支援する。さらに今回は、FRBがアリコなど2社の株を保有して保険事業収益を受ける見返りにAIGへの融資残高を削減、FRBへの利払い返済を軽減して救済する措置をとっている。AIGは事業や資産の売却が進まず、FRBから受けた融資に返済ができなくなっていた。米政府はAIGの事業の分割再編で経営の立て直しを図るとしているが、今後もさらに公的資金の注入が続くという予想が一般にされている。日経の記事は、すでにAIGはCDSの部門だけでなく本業の保険事業でも赤字に陥っていて、今後も顧客企業から一斉解約が入る可能性があると悲観的な見方を示している。  

AIG破綻_2米政府は1200億ドルの公的資金を注入しながら、水面下でAIGの事業や資産を売却する動きを進めていたようだが、民間に買い手が見つからず、結局、苦肉の策でFRBが傘下の生保を出資買収する形で接収し、損保を別会社に移管して別の経営陣が管理することになった。事実上の破綻処理である。破綻を破綻として衝撃的に市場に見せないように政府とFRBが演出の細工をしているだけだ。事業の買い手が見つからなければ、顧客の解約で自然消滅となる。多額の公的資金の返済義務を引き継ぐ事業譲渡に応じる民間企業があるとは思えず、米政府がよほどいい条件を出さなければ誰も買い手にはならない。米政府もマスコミも何も言っていないが、投入した1500億ドルの公的資金の回収はおそらく困難になるだろう。今回の救済について、政府とAIGは、支援がなければ格付け会社から格付けを引き下げられて事業継続が危なくなる恐れがあったからと言っている(日経1面)。おそらく、AIGは新規契約の激減と解約の増大で、現金収入が減って資金繰りに窮しているのである。金融市場からも資金調達できず、だから「格付け」を言い訳にしたのだ。

AIG破綻_3AIGの巨額損失の原因は、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の金融保証事業のバブル崩壊による。CDSの商品の仕組みとAIGの破綻については、これまでNHKのクローズアップ現代などでも何度も解説されてきたが、NHK出版の水野和夫の『金融大崩壊』に分かりやすい説明が提供されている(P.58-65)のでご紹介したい。水野和夫の議論は常に理性的で、要所を的確に押えていて、また新自由主義に対する批判的視角も安定感があり、信頼して拝聴することができる。水野和夫から得た理解で簡単に言えば、CDSは金融商品のリスクをヘッジする保険商品である。証券化商品は、サブプライムローンなどリスクの高い債務とそうでないローリスクの債務が細切れにされて寄せ集められて再証券化されているため、それを購入する投資家はリスクの正確な判断ができない。そのため、リスクを回避するためにセットとして保険を組むのである。その保険がCDSで、購入する債務担保証券に損失が生じた場合、保険会社が損失分を補償してくれる仕組みになっている。これで投資家は安心して証券化商品を買うことができる。ただし、保険会社に保険料を支払わなければならない。

AIG破綻_4こうして、CDSはサブプライムローン担保証券とセットで販売され、投資家のリスクをヘッジする保険商品として爆発的に売れた。CDSを売る保険会社は莫大な儲けを得た。CDSは証券化商品を投資銀行が拡販する手段として機能し、CDSが普及することで住宅バブルをさらに加速させる相乗効果を導いた。CDSの市場は、2001年の契約残高が1兆ドルだったものが、2007年には62兆ドルを超えるまで膨張している。住宅バブルが崩壊し、住宅ローンが焦げ付き、それを担保として証券を発行した会社が倒産し、発行された証券化商品が紙屑化して損失が出始め、契約で元本を保証していた保険会社に請求が殺到する事態となり、米保険最大手のAIGが経営危機に陥ったということになる。日経の3面記事には、AIGの抱えるCDSの元本持ち高が3700億ドルだと書いている。3700億ドルはCDS全体(62兆ドル)の1%にも満たないが、米政府が注入した1500億ドルの倍以上の金額になる。水野和夫の説明が分かりやすかったが、ここで保険会社が破綻すると、損失補償の保険契約の効力がなくなり、金融商品を購入した企業にリスクがそのまま降りかかる。すなわち、時価会計に損失を計上しなくてはならなくなる。

AIG破綻_5これだけ金融バブルの崩壊が言われ、証券化商品市場の潰滅と金融工学商品の紙屑化が言われながら、投資銀行の数社が潰れただけで、ヘッジファンドが生きているのが私は不思議だったが、CDSで保険会社から投資元本を回収していたのである。だから時価会計に損失を計上せずに済み、経営破綻を免れていたのだ。CDSの責任元である保険会社が潰れたら、リスクのある証券化商品を抱えている全ての会社が潰れる。米政府がAIGを破綻させられないのは、単に損保や生保の一般顧客への配慮だけではなく、米国の金融世界をクラッシュから守るためだろう。しかしそうすると素朴な疑問が起きる。62兆ドルのCDS残高のうち、AIGの持ち高が3700億ドルだとすれば、残りのCDSの残高はどこが抱えているのだろうか。そこには損失補償の請求は来ていないのだろうか。AIGの事業譲渡を持ちかけられている生保のプルデンシャルなどは、CDS事業とは無縁だったのだろうか。日本でもバブル崩壊のときは銀行と保険が共に危機に陥り、土地に手を出していた大手は例外なく巨額の不良債権を抱えた。昨年、モノラインの破綻と米政府による救済の報道があったが、その後はCDSの問題についてはAIGが一手に悪役を引き受けている感がある。

AIG破綻_6日経ほどではないが、今日の朝日の経済面もAIGの記事が大きく出ていて、AIGの巨額損失の理由がCDSだけでなく、保有するカリフォルニアの商業用不動産の下落の影響が大きいという米国内の報道情報を伝えている。全体的に判断して、AIGの再建は無理で、事実上の破綻であり、名前だけ生き残らせながら切り売りされ、時間をかけて解体消滅されるという結論になる。その時間の長さが、CDSという不良債権が処理される時間の長さになるのだろう。当初、米国の政府とマスコミは不良債権の処理について日本の失敗を言い、日本の二の舞は避けろと言い続けてきた。迅速な判断と行動さえすれば、不良債権の処理は短期間でできて経済を立て直せるという確信を持っていた。日本人はバカで愚図で金融の知識がなく、政治家や経営者に改革(新自由主義政策)のセンスと決断力がないから、不良債権処理に10年以上の無駄な時間を要してきたのだと言ってきた。オバマも同じことを言い、日本の愚は繰り返さないと宣言して米国民を激励した。一方で日本を侮辱しながら、もう一方で日本に米国債購入の救援をせがみながら。不良債権の処理というものが、口で言うほど簡単なものではなく、政府の政策プロパーで対処できるものでない事実を今後の米国は知ることになるだろう。我慢強い日本人だからこそ10年で処理できたのだ。

AIG破綻_7米国のこの1年は、金融危機に次ぐ金融危機の連続で、関係企業が決算を発表する毎に公的資金を注入して、それを政府とFRBの管理下に置く対策を打ち続けることになるだろう。日経の3面には、相次ぐ金融対策で財務省が人手不足だと書いている。これは事実に違いない。シティの経営実務も財務省の職員が面倒を見なければならなくなった。シティは破綻させることはできない。AIGも破綻させることはできない。財務省とFRBのハーバード出の官僚が2社の帳簿をめくって、資産売却と事業譲渡とリストラ執行の計画をExcelで立てるのである。米国の社会主義経済も板に着いてきた。これからさらに何社かを国有化(事実上)し、政府の官僚が企業に乗り込んでゴーンのようなリストラ経営をやる羽目になる。現在の米国の財務省は嘗ての大蔵省とそっくり同じ業務になり、社会主義国の経済ビューローになっている。だが、彼らが社会主義国の経済官僚の仕事を楽しくできるのは、公的資金を無尽蔵に入れてもドル危機が起きない今のうちだけだ。いずれFRBの危機が現実化する。破綻先企業の株を無闇に購入したり、相手が欲しがる金額の融資をできなくなるときが来る。FRBのバランスシートは健全時の3倍に資産膨張していて、財務状況の悪化を懸念する声が高まっている。最近、FRBの財務状況に関する記事が日経に載らなくなった。注意して見ているのだが。

さらに、州政府の財政危機が深刻化し、日本のように「市町村合併」と「三位一体の改革」的な状況が現出するだろう。

【追記】

最新のニュースで、AIGの元CEOのグルーンバーグAIGを証券詐欺で提訴した記事が出た。その中に、「(AIGの現経営陣が)少なくとも5270億ドルのデフォルトリスクを抱えたクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)関連損失を隠していたと主張」とある。実は上の文中で、日経の本日3面記事の情報として、AIGのCDSの持ち高を3700億ドルと紹介したが、この日経の記事の金額は小さすぎるように思われてならない。記事の署名はニューヨークの松浦肇とある。何故なら、政府の公的資金注入が1200億ドルで、昨年のAIGの決算損益が992億ドルであり、単純に計算して2192億ドルをCDSの不良債権処理に費やしている勘定になる。本業の保険事業で黒字を出しているAIGの場合、赤字を出す要因はCDSの損失補償の費用だけだ。であるとすれば、2192億ドルでCDSの残高を消して行って残りが3700億ドルだとすれば、相当な部分を半年で処理したということになり、ヤマを超えて処理の目処が立ったと言えるはずだ。3700億ドルのCDS元本残高は小さすぎる。松浦肇記者は資料の数字を1桁間違ったのではないか。3兆7千億ドルの残高なら、ひとまず頷ける数字と言える。

AIG破綻_Z
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こころはまだ燃えているか

こころはまだ燃えているか
ほんとうの怒りや哀しみで
そして
屠殺される準備はできているか

小沢一郎が抹殺されたら
ぼくらには もう
どんな未来も残されていないことだろう

この断崖絶壁の危機の時代に
いま最も必要な政治家の
小沢一郎を葬り去ろうというのか
お前たち奴隷たちは

アメリカや
アメリカの奴隷の
政治屋や法務官僚どもの力で・・

それでも
お前たちは日本人なのか
奴隷じゃない日本人は
未来永劫に
お前たちを許さないだろう

アメリカへ
とっと行ってしまえ
腐りきった者たちよ

利権まみれの政官財や
大マスコミやカルト宗教どもよ
と言いたい!


◆こんな国策的陰謀冤罪を決して許してはならない。奴隷や畜生になりたくなければ・・こんなデタラメを認めたら世界中の人々や未来永劫に後世の笑いものだ!
事実経過を簡潔に知るためにはーhttp://sensouhantai.blog25.fc2.com/?no=675

No title

アメリカには基軸通貨特権とパックスアメリカーナ体制がありますからね。
アメリカに倒れられると困る国から借金しまくってでも立て直すでしょう。
その代表が日本と中国ですね。
90年代あれだけ日本の為替介入を批判しまくってたのに今度は借金の乞食行脚をやってますね。
ヒラリーのアジア歴訪もその為でしょう。
中国は元建て米国債を要求したようですが。
話しは替わりますが小沢氏の秘書逮捕は国策臭いですね。
米軍削減(日本の自立)を言い始めた途端これですもん。
彼のかつての親分である田中角栄氏と被りますね。
彼の場合、中国との国交正常化を図った事、独自原油ルートの確保に動いた事が米国の逆鱗に触れたと言われてますよね。
日本が米国と距離を置く為にはどうしても日中・日露の関係強化が必要になって来ますしね。
また発行された米国債の7割を日中で保有しておりますから、日中接近は米国に取っては好ましい事では無いでしょうしね。
一方のロシアは地下資源が豊富で米国に匹敵するほどの核保有国でもあります。
日本を米国の属国、あるいは植民地にして置く為には日中・日露の離反は米国の最重要課題かも知れません。
おそらくは小沢氏も米国から自立を図る上で同様の事を考えてたのかも知れませんね。
今回のスキャンダルがどの程度影響があるのかはまだ分かりません。
政治家の秘書の逮捕なんてかつては良くあった事ですから。
ただ郵政問題、特にかんぽの問題から目をそらしたいマスコミとしては渡りに舟でしょうね。
しばらくは小沢問題一色になりそうです。
かんぽの問題はそれより遥かに大きくて深刻だとは思うんですが・・・
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