スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

オバマ政権の対日政策 (2) - ブッシュの延長とクリントンへの回帰

オバマの対日政策(2)_1就任式を終えたオバマ新大統領の初仕事は、国務省に足を運んで新長官のヒラリーを職員に紹介することだった。そのとき、新大統領の外交施政方針の第一声とでも言うべき重要な言葉が発せられたが、それは「イスラエルの自衛の権利を支持する」というもので、イスラエルのガザ攻撃を明確に支持する意思表明だった。Let me be clear: America is committed to Israel's security. And we will always support Israel's right to defend itself against legitimate threats.. 聞きながら大いに失望させられたが、その映像が流れた1/23の報道ステーションでは、空爆で廃墟のようになったガザにカメラが入り、一人の子供が記者に向かってイスラエルの侵攻の真実を証言していた。「僕の弟は目の前で頭と胸を撃たれて殺された」。事実は誰の目にも明らかなのに、「世界の大統領」であるオバマにとっては、それは非人道的な戦争犯罪ではなく、正当な自衛権の行使であり、自由と民主主義の守護者である米国は積極的に支持すると言うのである。  

オバマの対日政策(2)_2ヒラリー長官が米議会の公聴会で披露した新政権の外交政策のキーワードは「スマートパワー」で、ハードパワーとソフトパワーの両方を使い分け、二つをミックスさせて米国の国益を守り実現する方針が説明された。このスマートパワー論の提唱者が日本大使に就任するナイで、オバマ政権の外交戦略に理論的支柱を提供している民主党の重鎮である。前回の記事で、国務省の東アジア部局が東京にオフィスを移転するようなものだと書いたが、国務省のヘッドクォーターを東京に置いたと言っても大袈裟ではないかも知れない。戦略理論の提供者の人物なのであり、米政権の外交全般に決定的な影響力を持っている。逆に見れば、あまりに大物すぎる存在なので、煙たがったヒラリーが、ナイをワシントンから離して極東に飛ばしたとも邪推される。昨日の記事の中で、ナイは靖国参拝や拉致問題で日本の右翼ファナティシズムを扇動する真似はしないだろうと楽観視したが、実はこの人物はそれほどハト派ではなく、「アーミテージ・レポート」の共同執筆者であり、対日方針はアーミテージと同じだった。

オバマの対日政策(2)_3すなわち、日米同盟をグローバルな性格に変質させ、日本の軍事的守備範囲を広げ、米軍司令部の指揮下に収めた自衛隊を世界中の紛争地に派遣させようという方針や、自衛隊の装備と兵器を拡充させて中国封じ込めに使おうという策略は、ナイの主導で発案され実施されてきたものである。1995年の「ナイ・イニシアティブ」が1997年の「日米防衛協力のための指針」になり、事実上この10年間の「自衛隊基本法」として機能して、インド洋給油からイラク派兵、そして今日の米軍再編までの事態を現実化させてきた。これからナイが着任し、米軍再編がさらに強引に進められ、自衛隊のアフガン派兵が政治の表舞台で論議されることになる。が、総選挙後に日本の外交と防衛の一線に立ちそうな面々を見ると、どれもこれも「ナイ・イニシアティブ」の申し子のような連中であり、集団的自衛権を解釈改憲して自衛隊を戦場に送り込みたい人間ばかりで、今年後半がさらに憂鬱な時間になりそうな悪い予感がする。前原誠司、長島昭久、浅尾慶一郎。ナイのところに尻尾を振って馳せ参じて、憲法変えます、核持ちます、空母買いますと言っていそうな顔である。

オバマの対日政策(2)_4前回、オバマ政権の対日政策における経済(金融と産業)の方面を予測したが、経済にせよ、安保にせよ、日本にとって具合のいい想定はほとんどなく、日米関係で何かニュースが発信されるときは、もっとカネを出せとか、血を流して貢献しろとか、騒音ぐらい我慢しろとか、日本を守ってやっている米兵の憂さ晴らしぐらいは大目に見ろとか、国民は常に眉を顰めて気分が悪くなるのではないか。今、思いやり予算というのがあって、これは米軍基地の維持費用の負担だが、今後は米国債の買い支えについても割当を毎年指示されて、今年は10兆円、来年は15兆円と、拠出負担を強制される事態になるかも知れない。日米関係の外交政策を見るかぎり、安全保障にせよ、金融経済にせよ、オバマの独自の政治哲学を日本国民が感じる瞬間は一度もないように予想される。若いガイトナーにとっては日本は米経済の貯金箱だろうし、サマーズは日本の製造業の技術力を米産業の利益に転化する秘策を「環境イチシアティブ」で仕掛ける魂胆だろう。ナイはアーミテージ路線の総仕上げで自衛隊のアフガン派兵と米軍再編を遂行する。だとすれば、われわれ日本国民にとって、一体何がCHANGEなのだろう。

オバマの対日政策(2)_5簡単に言えば、安全保障ではブッシュ政権と同じ路線の延長が続き、経済関係ではクリントン政権の時代に戻る。それがオバマ政権の対日政策である。サマーズとナイの二人が対日政策の最高責任者となる。中国に対してはヒラリーが前面に立つだろう。日本人から見て、オバマ大統領は象徴の存在であり、政策の実質面で触れることのない偉い偶像的存在になる。日本の象徴天皇のような雲の上の存在になり、記念行事がある機会に発する英語のスピーチを新聞紙面に全紹介して、英語の苦手な日本人が英語を崇めながら勉強に励む神聖な対象となる。オバマの「変革」は、特に日本人にとっては言葉だけのものになり、積極的な中身を実感して評価できるものにはならない。岩波の「世界」の1月号に、砂田一郎による「オバマ新大統領はアメリカを変えるか」と題した論文があり、読み直して非常に面白い。この号には金子勝の「グリーン・ニューディール」も載っていて、「グリーン・ニューディール」政策について日本で提供された案内としては、これが最も詳細な内容を示したテキストだろう。二つとも昨年11月下旬に書かれたもので、オバマ政権に対する期待が躍動して脈打つ筆致になっている。それは私も同じだった。

オバマの対日政策(2)_6砂田一郎は、丹念にオバマの1年間の言動の軌跡を追いかけていて、その上で、「政策の転換に関して言えば(中略)大胆な政策路線の変更を、オバマも再現するだろうと期待するには若干問題がある」と言い、「オバマと民主党はこの選挙で(中略)現状に対する代替的な政治理念とそれに基づく新たな政策を事前に用意していたとは言えない」と分析している。CHANGEと言いながら、政治理念と政策の転換については公約の明言をしなかった。その事実を看て取っている。そして、1/20の大統領就任演説を期待し、そこでオバマが変革のリーダーシップを確立することを待望し、聴衆の心を掴む雄弁と感情を共有し合う才能によって、国民に変革の事業への参加を促す前向きなメッセージを示すだろうと予想している。実際に表面上はそのとおりに動いた。だが、恐らく砂田一郎も1/20のオバマ演説には納得していないはずで、期待はずれに感じたのではないか。「変革」の中身が語られなかった。新自由主義からの脱却という政治理念の問題に踏み込まなかった。金融危機をもたらしたのは、ウォール街の強欲な一握りの不心得者の暴走によるものだとされ、一部の人間の軽挙妄動の問題に解消された。

オバマの対日政策(2)_7システムやモデルの問題として定義されず、新自由主義という本質的な問題はマスクされた。金子勝が何度もテレビで言い、その度にわれわれも頷いているように、小泉竹中の構造改革が失政だったことを正しく総括して反省しないと、新しい政策を対置することはできない。それは日本だけでなく米国も同じはずだ。オバマのようなカリスマ的指導者が出現しながら、過去の新自由主義の過誤に対して直截的な批判と総括が与えられない点は、われわれには不満であり、このことは日本の政治に大きな悪影響を及ぼす結果となる。日本も選挙で新しい政権に変わるだろうが、そのとき、新政権は小泉竹中路線を明確に否定するだろうか。オバマは選挙を通じて立ち位置を右へ右へ寄せ、最後には昔のクリントン政権と同じ地点まで右に寄り続けた。日本の新政権は、間違いなくオバマ政権と同じ性格と方向に自己を同一化しようとする。選挙で「変革」を唱え、しかし、その「変革」は小泉竹中路線を否定しない政策のものだったら、われわれの生活はどうなるのだろうか。オバマの「CHANGE」は他人事ではなくて、まさに日本の政治そのものを規定する。私が就任演説に落胆するのは、それが日本の政治に重大な影響を持つからだ。

オバマの対日政策(2)_8オバマ政権の対日政策は、安保はブッシュ政権の延長、経済はクリントン政権への回帰となる。米国の利害の一方的な押しつけであり、日本の犠牲のみが強制される関係である。ナイは日米地位協定は改訂しないと断言し、思いやり予算の削減も許さないと言っている。1/26の紙面で朝日新聞の船橋洋一がオバマ演説に対する論評を書いているが、政府やマスコミと同じ論旨であり、岡本行夫や森本敏と全く同じ主張が並んでいて、要するに、「オバマ政権の日本に対する期待に日本が応えることができるかどうかが試されるだろう」という言い分である。日本というのは、米国の要求に対して常に正しく応えられるかどうかの存在であり、すなわち、米国の指導は常に真理に基づいた正当なものであり、蒙昧な日本はその教導に全面的に従うことで道を誤らず自己を幸福にできるのだという思想が発現されている。米国が日本を支配し操作する超越的な論理が、朝日新聞の主筆である船橋洋一の脳を占める基本思想になっていて、船橋洋一は蒙昧な日本国民に米国様に黙って従えと説諭するのである。船橋洋一自身が自己をオバマ政権の人間だと錯覚して観念していて、国務省に代わって日本人を教化する役目を買って出ているのだ。その崇高な役目に船橋洋一は興奮を覚えている。

そして、日本の論壇では、そうした米国の横槍と強制に反発する気分は、右翼の田母神俊雄の復古反動の言説に吸収され、村山談話は米国盲従だとして、巧みに反米の気分が村山談話否定や憲法否定の政治主張にスリカエられて行く。左側に反米の論を上げるフィールドがない。

オバマの対日政策(2)_Zオバマの対日政策(2)_Z1
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

先行きはやっぱり暗いですね

オバマ政権に期待はできない。と言う論調の記事はちらほら見られますが、ここまで深く分析したものはたぶん皆無でしょう(田中宇氏の分析が気になってきますが)
ここで述べられた内容は日本の未来を今よりさらに暗くするもので、とても一気に読めるようなものでありませんでした。しかしこれが今、自分たちがおかれている現状であり、直視しなければならないことであることは理解できます。
昔、何かの本にあった「いつまで続くぬかるみぞ」が思い起こされます。有料化の前にぜひ何か光が見いだせるような記事をお願いします。このまま有料化されて記事が読めなくなると、あまりにも寂しいです。
ところで、選挙で民主党が勝ち小沢政権ができたとき対米従属路線はやっぱり継続されるのでしょうか?私は小沢氏を支持していませんし、彼は我々庶民を蔑視する感情を内包していると感じていて、とても支持する気にはならないのですが、ただ一つ評価できる所はシーファー大使に恥をかかせたことがありましたね。あれは良くないと思っているのですが、一方で「ざまあみろ」という感情もありました。あのパフォーマンスは好意的に解釈すれば「米国のいいなりにならないぞ」というメッセージがあったのではと思っています。
選挙では民主党に一票を投じる気になりませんが(もちろん自民党もです)、現実を見ればあれに期待するしかないと思うようにしています。
話は変わりますが、橋本知事の支持率が80%を超えたそうですね。これについて支持している人たちを批判するのは簡単ですが、この異常な支持率の高さはやはり世相が反映していると思います。
彼の異常とも言える破壊的な言動と行動は、「もうぶっ壊れてしまえ」という深層心理に共鳴したのではないと思っています。そしてのその感情は橋本氏を支持しない私にも共有していてその差は紙一重であると感じています。だからとてもその人達を批判できません。
ブログ主さんが予想する政治状況だとこの傾向は続くのでしょうね。

有料化

を宣言されてから本気出されましたか?
以前に比べて密度が濃くなったような気が。
有料化申し込み人数は何名位なんでしょうか?
プロフィール

世に倦む日日

Author:世に倦む日日
(世に倦む日日FC2版)

最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
リンク
access countベキコ
since 2004.9.1












RSSリンクの表示
アクセス数とメール
エキサイト版に避難中です。
FC2のふざけた釈明

access countベキコ
since 2004.9.1


  
ご意見・ご感想

Twitter
Google 検索ランキング
下記のキーワード検索で
ブログの記事が上位に 出ます


竜馬がゆく
花神
世に棲む日日
翔ぶが如く
燃えよ剣
王城の護衛者
この国のかたち
源氏物語黄金絵巻
セーフティネット・クライシス
本田由紀
竹中平蔵
皇太子
江川紹子
G20サミット
新ブレトンウッズ
スティグリッツ
田中宇
金子勝
吉川洋
岩井克人
神野直彦
吉川元忠
三部会
テニスコートの誓い
影の銀行システム
マネー敗戦
八重洲書房
湯浅誠
加藤智大
八王子通り魔事件
ワーキングプアⅢ
反貧困フェスタ2008
サーカシビリ
衛藤征士郎
青山繁晴
張景子
朱建栄
田中優子
三田村雅子
小熊英二
小尻記者
本村洋
安田好弘
足立修一
人権派弁護士
道義的責任
古館伊知郎
国谷裕子
田勢康弘
田岡俊次
佐古忠彦
末延吉正
村上世彰
カーボンチャンス
舩渡健
秋山直紀
宮崎元伸
守屋武昌
苅田港毒ガス弾
浜四津代表代行
ガソリン国会
大田弘子
山本有二
永岡洋治
平沢勝栄
偽メール事件
玄葉光一郎
野田佳彦
馬渕澄夫
江田五月
宮内義彦
蓮池薫
横田滋
横田早紀江
関岡英之
山口二郎
村田昭治
梅原猛
秦郁彦
水野祐
渓内譲
ジョン・ダワー
ハーバート・ノーマン
アテネ民主政治
可能性の芸術
理念型
ボナパルティズム
オポチュニズム
エバンジェリズム
鎮護国家
B層
安晋会
護憲派
創共協定
二段階革命論
小泉劇場
政治改革
二大政党制
大連立協議
全野党共闘
民主党の憲法提言
小泉靖国参拝
敵基地攻撃論
六カ国協議
日米構造協議
国際司法裁判所
ユネスコ憲章
平和に対する罪
昭和天皇の戦争責任
広田弘毅
レイテ決戦
日中共同声明
中曽根書簡
小平
国民の歴史
網野史学
女系天皇
呪術の園
執拗低音
政事の構造
悔恨共同体
政治思想史
日本政治思想史研究
民主主義の永久革命
ダニエル・デフォー
ケネー経済表
価値形態
ヴェラ・ザスーリッチ
李朝文化
阿修羅像
松林図屏風
奈良紀行
菜の花忌
アフターダーク
イエリネク
グッバイ、レーニン
ブラザーフッド
岡崎栄
悲しみのアンジー
愛は傷つきやすく
トルシエ
仰木彬
滝鼻卓雄
山口母子殺害事件
ネット市民社会
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。