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オバマ政権の対日政策 (1) - サマ-ズとガイトナ-の新自由主義

オバマの対日経済政策_1オバマ新大統領の就任演説の細部にわたって、当の米国以上に熱心に解読作業をした日本国民と日本のマスコミは、オバマ政権の対日政策の中身に対して神経を集中させている。私の予想では、おそらくオバマ政権の対日政策には二つの任務と目的があり、二つのユニットが分業で任務を遂行するのではないかと思われる。二つの任務とは、一つは経済であり、もう一つは安全保障である。経済の面での目的は金融と産業の二つがある。金融の対日政策はこれまでと同じで、簡単に言えば、日本の富を米国に収奪することである。日銀にドルを買い支え続けさせ、日本の政府と民間に米国債を買わせ続け、日本の個人貯蓄の金融資産をドル資本に移し換え、米国経済にマネーを供給すること。産業の対日政策は、電気自動車の内燃仕様を米国のイニシアティブとして確立し、日本の自動車メーカーをアラインさせること。自動車を含めた工業製品の環境基準技術仕様を米国の産業界が主導策定する仕組みを作り、日本企業にカネを払わせて従わせ、国際標準にすること。  

オバマの対日経済政策_2この金融と産業の面での対日政策、露骨な表現で言えばゼニカネのたかりと毟り取りだが、ゼニカネ方面の対日政策を指揮し担当するのはサマーズとガイトナーである。ナイは手を汚さない。ナイの担当は安全保障で、米軍再編とアフガン戦争支援だけでなく、中国と韓国北朝鮮を含めた東アジア全域の安全保障を見る。ナイは日本大使だが、格的に単なる大使職の人事配置とは思えず、国務省の東アジア部局が東京にオフィスを構えるような権限と機能を持った大型のオーガニゼイション・チェンジになるのではないか。例のワシントン州の米陸軍第1軍団司令部を座間に移転させたのと同じように、国務省が東アジア外交を機動的に推進するために、大物のナイを東京に置き、東アジアの安全保障全般を統括させるのではないかと思われる。世界第2位と第3位の経済大国がある東アジアは、世界の富の生産基地であり、この地域の安定は米国にとって決定的に重要な意味を持つ。米軍再編で自衛隊が米軍の傘下に入るように、外務省の対中対韓対北朝鮮外交もナイの指揮監督下に組み込まれるだろう。

オバマの対日経済政策_3今回は安全保障ではなく金融経済の方面に注目するが、結論から先にオバマ政権の対日政策の特徴を言えば、ネオコン政策の性格は払拭されるがネオリベ政策の性格は依然として残る。ナイの場合、アーミテージが小泉純一郎にやらせたような、靖国参拝で中国を挑発して日中関係を冷戦化させるような真似はしないだろうし、北朝鮮拉致問題で日本の右翼ナショナリズムを扇動する愚は採らないと思われる。だが、通貨と金融をコントロールして円資産を米国にマネー供給するマネタリズムが消滅するとは思えず、むしろそれに加えて、金融だけでなく産業の面でも米国による日本への横槍と強要が多くなることが予想される。ブッシュ時代、共和党政権というのは、金融と軍事には異常に執着するが、産業に対しては実は無関心な傾向が強かった。自国の産業を成長させようという気がないのだ。逆に民主党政権というのは、米国の産業を育て競争力をつけようとする。通商に積極的に割り込み、ルールを強引に操作し、仮想敵国視した「経済脅威国」に無理難題をふっかけ、あらゆる手段を動員して相手を弱体化させようとする。

オバマの対日経済政策_4前にも記事に書いたが、共和党は新自由主義で民主党はケインズだという単純な図式での理解は間違っている。それはガルブレイスが健在だったカーター政権までの構図であり、特に1993年から2001年までのクリントン政権というのは、レーガン政権以上に強烈な新自由主義政策を推進した政権だった。レーガノミックスの時代に端緒として発生したものが、アクセラレイトされて政策的制度的に全面化したのがクリントン時代である。金融派生商品、レバレッジ、格付機関、BIS規制、住宅バブル、年次改革要望書、これらはクリントン時代に話題になり全盛になった現実であり、世界に広く知られるようになった新自由主義の諸相である。1997年のアジア通貨危機もクリントン時代の出来事だった。ヘッジファンドによる空売りを規制してバーツを防衛しようとしたタイ政府に、横槍を入れて妨害したのは財務長官のルービンであり、吉川元忠の『マネー敗戦』にもその経緯が描かれている(P.156-175)。ルービンはゴールドマンサックスの出身で、ポールソンの先輩である。毎週木曜日にグリーンスパンと朝食を共する蜜月関係は有名で、根っからのマネタリストであり新自由主義者だった。

オバマの対日経済政策_5aウォール街の金融バブルは、クリントン政権下のルービンとグリーンスパンの二人三脚で過剰に膨張して行ったものである。クリントン時代にシステムが構築された。そのルービンの下で財務副長官だったのがサマーズで、ルービンが退任した1999年に財務長官に就任している。ヘッジファンドを使ってアジア通貨危機を仕掛けたのは、黒幕がルービンで実務者がサマーズだと言われている。大蔵省財務官だった榊原英資は、サマーズに何度も電話をかけてヘッジファンドを規制しろと要求したが断られたと証言している。そのサマーズが、今回、オバマ政権の経済政策全般を管掌するNEC(国家経済会議)の議長に就任した。米国のNEC議長は日本の経済財政担当相に当たる。そのサマーズが財務長官のときに国際金融を担当した財務次官がガイトナーである。ネオリベ全盛バブル全盛のブッシュ政権のとき、若くしてIMFの政策企画審査局長をやり、NY連銀の総裁をやっていた。まさに新自由主義米国経済の貴公子。サマーズとガイトナーは親分子分の関係であり、研究者のキャリアのあるサマーズが理論でガイトナーを指導する立場になる。ガイトナーは、ドル防衛と不良債権処理と対日金融工作の専門職のようになるだろう。

オバマの対日経済政策_5クリントン政権の性格と金融政策に再注目して再定義する必要があるのは、そのときのスタッフがそのままオバマ政権の主要な経済閣僚に入っているからである。民主党というのは、共和党と違って、産業や市場に政府が政策をもって積極的に関与し介入する。クリントン政権というのは、実は政府が法律と政策で米国の市場をネオリベラルなシステムに完成させて行った時代だった。例えば、証券と銀行の垣根を取り払った金融規制緩和の立法が有名である。民主党というのは、法律で市場を変えようとする。法律で市場を変える方向が(ルーズベルト的な)福祉国家的な方向ならよかったが、クリントン政権は逆で、新自由主義的なシステムを全面化する方向で法律を変え、金持ちがさらに儲かるように市場に介入したのである。その点、共和党は無理に政府が法律で経済システムを改造しようとしない。市場に任せる。この事実に気づくと、日本の小泉竹中政権の性格が際立ってクリアになるように思われる。彼らは「市場に任せた」のではない。、まさに積極的に市場に介入して、次から次へと法律を制定し、制度を変え、労働法制と資本法制と社会保障と税制の制度を新自由主義に改造したのである。官僚や自民党の抵抗を排し、労組や地方の抵抗を粉砕して、革命的にやったのだ。

オバマの対日経済政策_7竹中平蔵がやったのは、「市場に任せる」というようなマイルドでスタティックな政治とは違う。市場も経済も全てを過激に作り変えた。権力を使い、法律を変えて、怒涛のような勢いで新自由主義の王国を建設した。それは、竹中平蔵ほどドラスティックではなかったが、クリントン政権がやったことである。小泉竹中政権のモデルは、本当はレーガン政権ではなくてクリントン政権である。権力を使って経済と社会をピュアに新自由主義化する。そのモデルを示したのは民主党のクリントン政権だった。世界をグローバル資本主義で一極支配する。世界中のマネーを米国に集める。そのシステムを実現したのは(円をマネー敗戦させた)クリントン政権だった。新自由主義は体制である。レジームである。新自由主義と共和党に関する一般表象は、この理解を妨害する方向に作用し、「市場に任せる」固定観念が容易に真実の察知に導かない。市場に任せているだけでは、資本法制や労働法制の規制緩和は実現しない。商法、会社法、会計法、証券取引法、労働基準法、労働契約法、労働者派遣法。ありとあらゆる法律が規制緩和の目的に沿って「改正」されたのである。小泉竹中政権は、まさにその意味において、戦闘的革命的に「市場に介入した」のだ。戦後日本の経済社会制度を根本から劇的に作り変えたのである。

オバマは、大統領に立候補した当時は、新自由主義と格差に批判的な政見を言い、中産階級を再建することを公約に掲げていた。だが、ホワイトハウスに入った経済閣僚の面々は、この15年間の米国の新自由主義の中枢で政策の舵取りをしていた人々であり、米国の制度と法律をネオリベラルな方向に変え、世界のマネーを米国に流し込み、金融商品のバブルを大増殖させていた当時者や責任者たちである。本当にオバマが米国を新自由主義から脱却させる方向を目指すなら、財務長官はスティグリッツを任命するべきだった。新自由主義を真っ向から批判するエコノミストを起用して、金融規制の着手だけでなく、税制の根本転換と社会保障制度の充実を図り、欧州型の経済社会モデルへの移行を明確に打ち出すべきだった。サマーズとガイトナーはクリントン政権の人脈であり、米国に新自由主義の繁栄をもたらせた張本人である。CHANGEにはならない。

オバマの対日経済政策_Z
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コメント

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No title

 ブルドーザーのごとく社会改造を行った民主党政権こそ,かえって新自由主義の本質を表すという視点,慧眼だと思いました.オバマ政権の経済閣僚がクリントン時代から引き継がれていることへの着目もまた.
 法制度を変えることによって新自由主義になったのだから,それを戻す必要がある.そういう当たり前の事実に思い至ります.

No title

そう言えば、スティグリッツの弟子たちは1人も政権に入りませんでしたね。
ただ面子は新自由主義者でもやってる政策はケインズ主義ですからね。
それに産業資本優遇をやるんなら日本に更なる内需拡大策を求めて来るんじゃ無いでしょうか?
小渕内閣が大規模な財出をやって内需拡大を図ろうとしたのもクリントン時代じゃなかったですか?
外需頼みを改めて内需拡大策をと言うのがプラザ合意以降の米国の要求だったように思います。
そう言う意味では、ブッシュ政権が異例だったとも言えます。
金融資本、軍需・石油産業優遇に偏っていましたよね。
その点では、幾分マシなのかと思いますが。
ただキッシンジャーの流れを汲むプレジンスキーが居ますので、中国優遇、日本冷遇の流れは加速すると思います。
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