スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

洋泉社MOOK 『「1Q84」 村上春樹の世界』

「1Q84」_12か月前に書評を依頼されて寄稿していた『1Q84』の特集本が出版された。洋泉社の『「1Q84」村上春樹の世界』(定価1000円)である。私の批評については正直なところ自信がないが、この本はとても面白い出来に仕上がっていてお薦めできる。佳作だ。『1Q84』を読んだ方なら、十分に楽しめて満足できる一冊であり、ぜひ手に取ってページを捲って試していただきたい。この本の面白さのポイントは、『1Q84』を読んでイメージする映像が次々と具体的な写真や図になって表現されている点である。本をパラッと捲ると、見開きの左側に若い女性の裸体の写真のページが開いて出てくる。青豆だ。体型(胸の形状の特徴)でわかる。見開きの右側に「青豆の日常」と書かれた表題があり、そこにはシティホテルの廊下の奥行きが撮影された写真がバックに構成されている。これだ。センスがいい。『1Q84』のイメージそのもの。青豆のビジネスもプライベートもこの空間にある。そして、最初のページに戻ると、あの首都高速3号線を三軒茶屋付近から見上げて撮影した写真が載っている。これもそうだ。このとおりだ。『1Q84』と共に生活した間、頭の中に常駐する映像はこれなのである。この企画本は『1Q84』を見事に視覚化してくれている。『1Q84』の視覚化に成功している。  

続きの内容をレジまぐ版に公開しました。コメントはこちらの方にお願いします。

書評には、今度の作品では村上春樹は時代をグリップできていないと書いてしまいましたが、この言葉は撤回しなくてはいけないようです。考えてみれば、時代をグリップできてない小説が、あれほど爆発的にヒットするはずがありません。どうやら、グリップされてないと感じたのは私の心であり、そしてまた、ひょっとしたら従来の読者層である団塊から下の世代であり、この作品の中心的な読者層になった30代から20代の若い層の心をしっかりグリップしたことは間違いないのです。

私にも読後の余韻が残っています。この間、政治ばかりを見てきて、政治ばかり論じてきましたが、この夏は村上春樹の『1Q84』と一緒に過ごした夏でした。5年か10年経ったとき、きっと強く思い出すのは、「政権交代」の選挙ではなく、青豆と天吾のラブストーリーに浸っていた時間でしょう。『海辺のカフカ』は、読みながら圧倒的な感動と興奮の洪水を感じた作品でしたが、『1Q84』は、読んだ後で余韻の中で問い直しの振幅が持続して、ずっと関心が引きずられたまま時間を送る作品です。

村上春樹は神ですね。老いにも若きにも、富める者にも貧しい者にも、平等に文学の世界に参加する幸福を分け与える。分け与えられる。幸福な時間を与えている。生活を豊かにさせている。村上春樹が事実として格差社会を破壊している。素晴らしいとしか言いようがない。村上春樹の小説と一緒に、同じ時代に生きられたことを感謝します。

「1Q84」_z

「1Q84」_z1


スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

人類は電気羊の夢を見ないか

 書評を寄稿された書籍を早速当地書店に予約しました。楽しみにしております。僕も「1Q84」を読み終えたばかりで、おおきな余韻に浸っている最中です。文章力も構成力も一段と完成に近づき、まさに世界の春樹ワールドがより進化をとげた感がありますね。ふたつの主題を、マラソンのときの軸足のように、交互に観せるかれの長編の手法も、当方のブログのコンセプトとまったくおなじで、「世界の終わりと…」あたりからの長編は熟読しています。
http://nyckingyo.exblog.jp/9459927/
今作はそのふたつの主題がずいぶん早めに結合されはじめ、お説のように「海辺のカフカ」ほどのドキドキ感が少なくなっていますね。

 1984年には、既にアメリカに移住しており、当時の日本の状況ディテールをほとんど知らないのですが、日本のブルジョア階級の方たちがアメリカで、ずいぶんでたらめなお金の使い方をされはじめていたことだけは鮮明に記憶しています。
オーウェルの「1984年」はその年を過ぎても、仲間のあいだで俄然論議となり、地球がそういったディストピアの世界(かたちはちがっても)に突入するのではないか、という予感はますます濃厚になりました。社会科学的というジャンルとはもちろん違いますが、この春樹作品と結末の先にあるテーマは、僕にはおなじようなもの、というふうに感じられます。文学ということなら、オーウェルを大きく超えている、とも思います。幻想が現実にすり替わる、もしくは二元宇宙というものの可能性が読者の想像力を大きく喚起します。

 ブログ「世に倦む日日」は政治・経済・社会科学という、実に現実性の強い(強くなければならない)ジャンルで、いつも冷静な考察からの仮説を出しつづけられていると思います。そこで、将来の政治がその仮説通り進行するか、ということはたいした問題ではなく、将来の現実となるものとの落差を指摘されていることがとても重要だと思っています。その落差こそが、いまの日本の政治にほとんど見当たらない「理想」に繋がっていくものなので、そこに大きな意味を感じている僕のような読者の共感を読んでいるのだと思います。
それはもちろん、文学的に観れば、クリエイティヴとかフィクションという肯定的なものですが、政治という現実世界では、大きな批判の対象にもなりやすいものです。そんな批判にめげずに、文学論をも含めて、より斬新な「理想」あるいは「ディストピア」を書き続けられることを望んでいます。

 春樹氏は例のイスラエルでの演説のあと、「正論原理主義」を批判する声明を出されましたが、ほとんどの人間がハマってしまいやすい、ひとつの正論原理への危険は、ふたつのストーリー(テーマ)をもつことで緩和され、それが欧米の読者にも絶賛されている一因だと思います。現在、当方ブログで宮沢賢治を取り上げていますが、ひとつの原理に偏らないという意味では、このひとも春樹氏とそっくりです。一見、優柔不断ともとれる、こうした日本を代表する文学者の思想が、イスラム原理主義などに代って、より大きな意味で世界情勢を批判するようになればおもしろいですね。
出すぎた長いコメントで失礼しました。 NY金魚

続・電気羊の夢

 政治と文学なんてカンケーないよ、と言われる方も多いでしょうが、大きく長いスパンで観ると、たとえばオーウエルの「1984年」を読んだおおぜいの読者が、こんな世界には絶対したくないということを、無意識の領分に深く植え付けることで、すでにずいぶん歴史は変わってしまったと思います。

 新首相になられる方の妻幸さんの「UFOで金星に行った」発言も、妄想と言ってしまえばそれまでですが、少なくとも新首相ご自身の、いつもどこか屈折した発言より、明るい日本の新時代の女性の自由な発言を象徴するものとして、ずっと好感がもてます。少なくとも日本以外の外国から観たらそんなふうに映っているのです。
かの女の発言を「文学」などと言うと全員から叱られてしまいますが、現実離れした独創的な発想は、うまく表現すれば、夢とユーモアを与え、現実の世界も同時にスムーズに進む場合があります。いままでの日本の政治家にいちばん欠けている部分だと思います。

 論旨が外れてしまいましたが、われわれアーティストは、ひとつの作品で、世界が、宇宙が変わると信じて、いつもクリエィティヴをつづけているのです。

予想されるBOOK3の存在

『1Q84』はこれで完結しているのではなく、BOOK3があるのではと思います。端的に、1984年には10-12月が残っているから、というのもありますが、BOOK2の終わり方は、主人公である2人の描き方も尻切れとんぼですが、他の主要人物である老婦人、タマル、ふかえり、小松なども一切触れられず置き去りにされています。なので、このMOOK本はその間隙を縫うタイミングなのでしょうね。お見事です。

私は写真家ですが、写真というメディアが、絵画などと違い、あまりにもイメージの幅を狭くする特性を持つが故に、BOOK3が出るかもしれないと期待している今は、このMOOK本を観たくない気持ちがあります。しばらく待ってみて、2つの月の世界がどうなるかを見届けたあとに、ゆっくり拝見するつもりです。

No title

しかし、本を買う、ということは、「グリップされた」ということなのでしょうか?どう読んだかは、買ったあとのことです。それなら、何億冊売れてもグリップうんぬんの話にならないはず。

BOOK3やはり出ましたね。

BOOK3やはり出ましたね。
これで10-12月が完成します。
プロフィール

世に倦む日日

Author:世に倦む日日
(世に倦む日日FC2版)

最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
リンク
access countベキコ
since 2004.9.1












RSSリンクの表示
アクセス数とメール
エキサイト版に避難中です。
FC2のふざけた釈明

access countベキコ
since 2004.9.1


  
ご意見・ご感想

Twitter
Google 検索ランキング
下記のキーワード検索で
ブログの記事が上位に 出ます


竜馬がゆく
花神
世に棲む日日
翔ぶが如く
燃えよ剣
王城の護衛者
この国のかたち
源氏物語黄金絵巻
セーフティネット・クライシス
本田由紀
竹中平蔵
皇太子
江川紹子
G20サミット
新ブレトンウッズ
スティグリッツ
田中宇
金子勝
吉川洋
岩井克人
神野直彦
吉川元忠
三部会
テニスコートの誓い
影の銀行システム
マネー敗戦
八重洲書房
湯浅誠
加藤智大
八王子通り魔事件
ワーキングプアⅢ
反貧困フェスタ2008
サーカシビリ
衛藤征士郎
青山繁晴
張景子
朱建栄
田中優子
三田村雅子
小熊英二
小尻記者
本村洋
安田好弘
足立修一
人権派弁護士
道義的責任
古館伊知郎
国谷裕子
田勢康弘
田岡俊次
佐古忠彦
末延吉正
村上世彰
カーボンチャンス
舩渡健
秋山直紀
宮崎元伸
守屋武昌
苅田港毒ガス弾
浜四津代表代行
ガソリン国会
大田弘子
山本有二
永岡洋治
平沢勝栄
偽メール事件
玄葉光一郎
野田佳彦
馬渕澄夫
江田五月
宮内義彦
蓮池薫
横田滋
横田早紀江
関岡英之
山口二郎
村田昭治
梅原猛
秦郁彦
水野祐
渓内譲
ジョン・ダワー
ハーバート・ノーマン
アテネ民主政治
可能性の芸術
理念型
ボナパルティズム
オポチュニズム
エバンジェリズム
鎮護国家
B層
安晋会
護憲派
創共協定
二段階革命論
小泉劇場
政治改革
二大政党制
大連立協議
全野党共闘
民主党の憲法提言
小泉靖国参拝
敵基地攻撃論
六カ国協議
日米構造協議
国際司法裁判所
ユネスコ憲章
平和に対する罪
昭和天皇の戦争責任
広田弘毅
レイテ決戦
日中共同声明
中曽根書簡
小平
国民の歴史
網野史学
女系天皇
呪術の園
執拗低音
政事の構造
悔恨共同体
政治思想史
日本政治思想史研究
民主主義の永久革命
ダニエル・デフォー
ケネー経済表
価値形態
ヴェラ・ザスーリッチ
李朝文化
阿修羅像
松林図屏風
奈良紀行
菜の花忌
アフターダーク
イエリネク
グッバイ、レーニン
ブラザーフッド
岡崎栄
悲しみのアンジー
愛は傷つきやすく
トルシエ
仰木彬
滝鼻卓雄
山口母子殺害事件
ネット市民社会
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。